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私が「自然と共生する庭」をつくる理由

街を歩くと、夏の日照りを遮ってくれるはずの木々は排除され、足元は熱を容赦なく吸収するアスファルトやコンクリートで覆われている。人々は「暑い暑い」と言いながら、日傘を差し、小型扇風機を手に歩いている。

 

もっと心地よい街、もっと美しい街、もっと豊かな暮らしがつくれるはずなのに。

そんな違和感を持ちながら、我が家の庭づくりは始まりました。

 

今回の記事では、長らく取り組んできた我が家の庭づくりが佳境を迎えるにあたり、私が庭という限られたスペースで「可視化したいこと」、そして「地上と地下の深いつながり」についてお話しします。

 

昨今の庭や土木が、見落としてしまっていること

街の庭先を見渡すと、少しもったいないなと感じる光景によく出会います。

コンクリートで地面も塀も固められ、区切られた狭いスペースに、申し訳程度にポツンと植えられた一本の木。草や落ち葉は敵として排除され、植物をモノのように扱う剪定によって、お化けのように不自然に暴れた枝や、四角い箱のように切り揃えられた木々……。

 

もちろん、住まい手の好みは自由です。しかし、知識や視点が足りないがために、「もったいない庭」になってしまっているケースが多いのではないでしょうか。

 

昨今の土木や造園の多くは、大地を単なる「土の堆積物」として見てしまっているように感じます。

土壌の成分や酸性度を気にすることはあっても、その奥にある「命のつながり」に目が向けられることは滅多にありません。

 

しかし、土は命ある有機物の集合体です。

ペットを飼うときに栄養以外に気温や湿度、日差しに気を使うのと同じように、大地に対しても同じように物理的な環境に気遣いが必要なはずなのです。

 

地上の元気のなさは、「地下の窒息」が原因だった

実は、「地上部に元気がないのは、地下に原因があることが多い」というのをご存知でしょうか。
『大地の再生』の矢野智徳さんや、『有機土木』の高田宏臣さんがわかりやすく示されています。

出典:WAKUWORKS株式会社 Webサイト
出典:WAKUWORKS株式会社 Webサイト

このイラスト(WAKUWORKS株式会社のWebサイトより)が示すように、江戸時代には地中を水と空気がスムーズに流れ、豊かな生命を育んでいました。

しかし現代はどうでしょう。アスファルトやコンクリートのベタ基礎によって環境が閉ざされ、地中の「水脈・気脈の詰まり」が起きています。

 

水の出口がなくなると、中の水は滞り、地中で水も空気も動かない状態になっていきます。すると水は腐敗し、地中に有機ガスが溜まり、土も植物の根も酸欠状態になり、劣化してしてしまうのです。

 

木々が病気になったり、街がヒートアイランド現象や洪水に見舞われたりする背景の一因には、この「地中の窒息」があります。

 

逆に言えば、地面の中が健やかで呼吸できる状態になれば、地上のジメジメやほこりっぽさは緩和されます。植物は自ずと元気になり、葉の艶も見違えるほど良くなっていくのです。

自然の資材で、大地に「呼吸の道」を取り戻す

では、どうやって地下を健やかにするのか。

私たちが庭の環境整備の施工に使うものは、自然界にある「土、石、木、有機物、植物」です。

 

例えば、地中に焼き杭(表面を炭化させた杭)を打ったり、土留めに丸太や枝、落ち葉などを使います。

これらの資材が年月をかけてゆっくりと朽ちていくプロセスで、周囲に植物の根や菌糸(きんし)が張り巡らされ、それがネットワークとなって地形を驚くほど安定させていくのです。

 

具体的なアプローチはこうです。

 

地下のケア:地中で水と空気が動くように「水と空気の通り道」をつくる。

 

地上のケア:地中の動きと連動するように、地上部の風通しもよくする。さらに、地表が直射日光や激しい雨風で傷まないよう、植物や有機物で守ってあげる。

 

このような「環境のベース」を整えてあげると、人間が一生懸命手をかけなくても、植物たちが自ら健やかに育ち始め、豊かな場が紡がれていく「命のサイクル」が回り始めます。

 

サイクルさえ回り出せば、人はもう汗水垂らして草抜きをしたり、耕したり、木をいじめるような過剰な剪定をしたりする必要はありません。踏圧など普段の暮らしで大地にかける負荷を取り除きながら、自然の邪魔をしないように、そっと少しだけ手を貸してあげるだけでよくなるのです。

 

飾りとしての緑から、「共生する仲間としての緑」へ

昨今一般的な「見た目を整えるための飾りとしての緑」と、この「自然のサイクルが巡る緑」が私たちにもたらしてくれる恩恵は、まったく一線を画します。

 

庭にこのサイクルを取り戻すことで、私たちは多くの恩恵を受け取ることができます。

 

  • 穏やかな気象環境(夏は涼しい風が吹き、冬は暖かい。土埃やジメジメに悩まされない。)
  • 命輝く美しい庭の景色(四季折々の生命の輝きを観察する楽しさ)
  • 建物の耐久性向上(地面の余分な湿気が抜け、基礎や構造が守られる)
  • 自然界との相互作用の楽しみ(自分が施した手入れに対して、自然が応えてくれる。もちろん思った通りに応えてくれないこともあるが、それはそれで自然の深みを知ることができる経験に。)

 

新築時の家づくりにおいて、私のテーマは「環境貢献・健康・経済性・暮らし」の両立でした。そして、それに続く庭づくりのテーマこそが、この「人と自然の共生(サイクルの構築)」です。

 

言葉でいくら自然と共生できる庭がよいと説いても、リアルな形として目の前にないと、なかなか伝わらない現代だからこそ、このサイクルが見える場を、私は自宅の庭で実現し、可視化してみせたいと思っています。

 

通過点としての「完成」へ

長かった我が家の庭づくりも、いよいよもう少しで一旦の完成を迎えます。

 

もちろん、自然との共生という意味では、これはゴールではなく「通過点」です。これから数回に分けて、我が家が実際に行った「水と空気の通り道をつくる施工(大穴、石畳、通気浸透水脈など)」の具体的なプロセスをお届けしていきます。

 

自然と共生する庭づくりとは、一体どんなものなのか。次回の【施工編】を楽しみにしていてください。