· 

あなたの家の“氷山”はどんな形?住宅のライフサイクルコストを見える化


家づくりの予算は、どのように決めていますか?

  • 今の家賃をもとに?

  • 住宅ローンの借入可能額から?

  • それとも、ライフプラン・シミュレーションをして?

ライフプラン・シミュレーションを行って予算を立てている方は、とても素晴らしいと思います。
ただし、住宅関連コストは「氷山」にたとえられることがあります。

 

海面の上に見えるのは「初期費用」。
しかし、その下に大きく広がるのが「維持費」です。
目に見える部分だけで予算を決めてしまうと、“見えない支出”に後から驚くことになりかねません。


見通しておきたい「ライフサイクルコスト(LCC)」

住宅の予算設定をするときは、建築時だけでなく生涯にわたってかかるコスト(ライフサイクルコスト)を見通すことが大切です。

 

では、あなたの家では、初期費用と維持費の割合はどのくらいになるでしょうか?
実際のシミュレーション例を見てみましょう。

家を建てるときの費用は氷山の一角。実際は見えない部分に、これだけの支出が潜んでいます。
家を建てるときの費用は氷山の一角。実際は見えない部分に、これだけの支出が潜んでいます。

A様(35歳)が土地を購入し、注文住宅を建築したケースでは、65年間の居住を前提とすると、
初期費用:56% / 維持費:44% という結果になりました。

 

「維持費の割合が意外と高い」と思われた方も多いかもしれません。
実際には、維持費が50%を超えるケースも少なくありません

 

【試算条件】

 

  • 光熱費は電気代(冷暖房以外を含む)+ガス代(調理用を含む)を合計。水道代は除外。

  • 医療費は住環境に影響されますが、今回は算入していません。

  • 35歳で建築、100歳まで居住する想定(65年間の試算)。

 


家づくりの形態と氷河の形

氷山の形(=費用構成)は、住宅の種類によってまったく異なります。

 

 

土地購入+注文住宅建築

初期費用は高くなりがちですが、維持費を抑えやすいのが特徴です。
ただし、設計・施工の品質やメンテナンスによっては、将来の建て替え費用が発生する場合もあります。

建売住宅の購入

初期費用はやや抑えられますが、メンテナンス費が高くなる傾向があります。
耐久性・断熱性・構造の確認を怠ると、将来的に追加コストがかかることも。

新築マンションの購入

初期費用も維持費も高め。
特に修繕積立金・管理費・駐車場代の比率が大きくなります。

中古住宅購入+リノベーション

初期費用を抑えられますが、修繕・設備更新の頻度が高くなりがちです。
長期的には、メンテナンスコストが大きな負担になる場合があります。

住宅FPからのアドバイス:予算は“初期費用ありき”ではなく

同じ「土地+注文住宅」でも、建築地の条件、工務店・設計事務所の考え方、認証の有無、省エネ設備の導入などで、ライフサイクルコストは大きく変わります。

そのため、初期費用だけで住宅予算を決めるのはリスクが大きいと感じています。

おすすめの進め方は次のとおりです。

① まず家づくりの形態(注文住宅・建売・マンションなど)を決める
② ライフプラン・シミュレーションで「初期費用+維持費(LCC)」の全体予算を設定する
③ 設計・見積もりの進行に合わせて、その都度ブラッシュアップする

 

ライフプランと住宅コストの両方を見える化することで、無理のない家づくりが可能になります。


維持費を抑えるためにできること

将来の経済環境は読めませんが、「維持費を小さく抑える設計」は確実な生活防衛策です。
注文住宅で特に意識したいポイントを紹介します。

 

① 災害リスクを考慮した土地選び

地盤が弱いと不同沈下や地震被害のリスクが高まります。
水害の復旧費用も非常に大きく、立地選びが長期的コストを左右します。

② 構造・素材の耐久性を重視する

木造住宅なら、耐震・結露・シロアリ対策、屋根や外壁の耐候性を設計段階で確認。
「長持ちする家」はメンテナンスコストの削減に直結します。

③ パッシブデザインを取り入れる

太陽光や通風など、自然エネルギーを活かす設計で光熱費を削減
詳しくは以下の記事で解説しています:

エコハウスの基本:パッシブデザインの効果【光熱費・CO2排出量シミュレーション】

④ 認証取得を戦略的に活用

長期優良住宅・認定低炭素住宅の認定は、住宅ローン控除・地震保険料の軽減などで経済的メリットが大きい場合があります。
コストと制約のバランスを見極めて選択を。

⑤ 省エネ設備の導入を検討

太陽光発電、エコキュート、太陽熱温水器などの導入は、ランニングコストの削減に直結します。
ただし、導入コスト・耐用年数・環境条件を踏まえて判断しましょう。


まとめ:見えないコストまで見える家づくりを

ライフサイクルコスト(LCC)を見える化すると、
「建てて終わり」ではなく「住んでからも安心できる家づくり」が可能になります。

初期費用だけでなく、将来にわたる住まいのコストを見通して、
家づくりの“氷山”の全体像を一緒に考えてみませんか?

 

ライフプラン+住宅LCCシミュレーションをご希望の方は、「コンタクト/予約ページ」からお気軽にご相談ください。