~迷わないための第一歩は、自分たちを知ることから~
「家を建てたい!」と思ったとき、まず何から始めればよいのでしょうか?
多くの方は、SNSで施工事例を見たり、住宅展示場に行ったり、まずは“情報収集”からスタートすることが多いと思います。もちろんそれも大切なことです。
でもそれと同時に進めていくと、家づくりがブレずに進み、満足のいく結果につながることがあります。
それが——
「家づくりの方針を整理すること」です。
必ず家族でつくりましょう
家族、あるいは夫婦で一つの方針をつくることが大切です。
まずは個人でじっくり考えてから、家族全員で集まって一つの方針にまとめていくのがおすすめです。
たとえ家族でも、価値観や好み、日々の暮らしで感じている課題は少しずつ違うもの。
意見が食い違うのは、むしろ自然なことです。
だからこそ、家族のこれからの暮らしをどうしたいか、
お互いの思いを共有しながら、一緒に考えていくこの時間がとても大切になります。
「違いを受け入れ、理解し合うきっかけ」として、ぜひ前向きに取り組んでみてください。
なぜ“方針”が必要なのか?
家づくりには、決めることが山ほどあります。予算、会社選び、土地、間取り、仕様、設備、ローン…。
それらを一つひとつ決めるには、「どんな暮らしがしたいか」「自分たちにとって何が大切か」といった軸が必要です。
軸がないまま進めてしまうと、「あれもいい」「これも気になる」と迷走してしまい、決断に疲れてしまうケースも…。
とはいえ、「どう考えればいいのかわからない…」という声も多いです。
そこで今回は、私が実際に試行錯誤を重ねてたどり着いた、【家づくりの方針の整理法】をご紹介します。
スムーズに進めるコツは「Why」から始めること
ビジネス界で有名なサイモン・シネックが提唱した「Start with Why(なぜから始めよ)」という考え方。
実はこれ、家づくりの検討にもぴったりなんです。
この考え方をベースに、以下の3つのステップで家づくりの方針を整理してみましょう。

【ステップ1】モチベーションを考える(=Why)
まずは、「なぜ家を建てたいのか?」「どんな価値観で暮らしたいのか?」を言語化してみましょう。
具体的には、以下のような項目を整理します:
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大切にしている価値観・好み
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これまでの暮らしで良かった点・不満だった点
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暮らしの課題(現在・今後・老後)
【ステップ2】プロセスを考える(=How)
次に、「どんなふうに家づくりを進めたいか?」という、プロセスに対する希望を明確にしていきます。
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どういう会社と進めたいか?(強み、設計の自由度、価値観、…)
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どういう関係性で進めたいか?(一緒に楽しみながら、お任せ、…)
家づくりの進め方は人によって合う・合わないがあります。
自分に合うスタイルを知っておくことで、建築会社選びがグッとラクになります。
【ステップ3】実現イメージを考える(=What)
最後に、「どんな暮らし・家・場所にしたいか」という具体的なイメージを描いていきます。
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どんな暮らしがしたい?(生活スタイル)
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どんな家に住みたい?(間取り・素材など)
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どこに住みたい?(環境・利便性)
具体例:Aさん家族とBさん家族
実際にこのステップに沿って整理してみた、Aさん家族とBさん家族の例をご紹介します。
それぞれの価値観や生活スタイルによって、全く異なる方向性が見えてきます。
▼ステップ1:モチベーション(Why)
検討項目 | Aさん家族 | Bさん家族 |
大事にしていること |
食べること・飲むことが大好き 家族で「食事の時間」を楽しみたい 自然が好き |
家族と過ごせる時間を大切にしたい 安心して暮らしたい |
よかった暮らし | 家では特にないが、キャンプに行くといつも楽しい | マンションの気楽さ・利便性 |
不満だった暮らし | キッチンが狭い・孤立している |
リビングが狭い 年々上がる管理費や光熱費 |
現在の生活課題 |
庭がない キッチンとダイニングが分かれている |
とにかく忙しい
家族で過ごす場所が狭い |
今後の生活課題 |
子どもと一緒に料理したい 家族が自然とキッチン周辺に集まってほしい |
将来的には子どもに個室が必要か |
老後の生活課題 | 1階で生活が完結するとよいが、… | 将来はマンションに引っ越しても良い |
▼ステップ2:プロセス(How)
検討項目 | Aさん家族 | Bさん家族 |
進め方の希望 |
ワクワクする間取りを提案してくれる会社と楽しく進めたい 価値観を理解してくれる担当者と話したい 自然との共生を大事にしたい |
堅実にリードしてもらいたい スムーズに手間なく進めたい |
▼ステップ3:実現イメージ(What)
検討項目 | Aさん家族 | Bさん家族 |
暮らしの理想 |
キッチンを中心に家族が集まる生活 庭で野菜を育てて食卓へ 気軽にBBQも楽しみたい |
家族が別々のことをしていても同じ空間で過ごせる、 リビング中心の暮らし |
住みたい家 |
キッチンを中心に家族が集まれる家 自然素材の手触りが感じられる家 |
リビングが広く、収納も備わっている家
高性能(断熱・耐震)で安心な家 性能の認証を取得したい |
住みたい場所 |
自然豊かな場所 夫の職場まで車で1時間圏内 果樹や野菜を育てられる土地 |
夫婦それぞれの職場から公共交通機関で30分以内
水害の不安がない街 |
最後に:まずは「自分たちの軸」を知ることから
家づくりは「どんな家を建てるか」、「どんな暮らしをしたいか」だけでなく、「なぜ家を建てたいのか」が何よりも大切です。
いきなり間取りや土地のことを考えると、あれこれ迷ってしまいがち。
でも、モチベーション → プロセス → 実現イメージという順番で整理していくと、自然と「自分たちにとって必要なもの・不要なもの」が見えてきます。
そしてその軸が、情報収集や建築パートナー選びにも大きく活きてきます。
とはいえ、方針をきれいにまとめすぎる必要はありません。
いろんな気持ちや希望が混ざっていても、それが今の自分たちのリアルな姿です。
また、最初に決めた方針を、ずっと変えずに守る必要もありません。
家づくりの途中で新しい発見があれば、柔軟に修正していっても大丈夫です。
それでも、最初にこの「自分たちの軸」を考える時間を取ることで、
家づくりの方向性がはっきりし、きっと一歩一歩前に進みやすくなるはずです。
ぜひ、試してみてください。