0. ゆりかごから墓場まで
住宅は建てて終わりではなく、
素材の採取・製造
- 建設
- 居住
- 改修
- 解体・廃棄
と複数のフェーズで環境負荷が生じます。
特に日本では「居住中のエネルギー消費」に注目が集まりますが、実は建設時や廃棄時の負荷も小さくありません。
これを体系的に把握できるのが LCA です。
1. 測ることは減らすこと
2. 住宅の環境負荷を測る
居住中のエネルギー消費に伴う CO₂ が大きいのは事実ですが、下記の2点が見落とされがちです。
3. フェーズ別の環境負荷のシェア

4. 構造が決定づける建設時CO2

構造別 LCAグラフによれば、建設時のCO₂排出は概ね以下の順です。
SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造) > RC(鉄筋コンクリート造)
> S(鉄骨) > 木造
理由は明確で、
- コンクリートは原料のセメント製造で大量のCO₂を排出
- 鉄は高温還元工程で多くのエネルギーを必要とする
家の寿命が長いほど建設時の負荷は相対的に薄まりますが、構造が重くなるほど初期環境負荷が大きい傾向は変わりません。
5. LCAを深堀り:素材の選択とサプライチェーン
LCA をより精緻に評価しようとすると、
同じ素材でも、実際には大きな違いがあることが見えてきます。
ここでは木材を例に、その違いを整理してみます。
● 国産材 vs 輸入材
輸入材は船で長距離輸送されるため、運搬時のCO₂が大きい。
● 乾燥方法の違い
高温乾燥(80〜120℃):重油大量使用 → CO₂大
低温乾燥(40〜60℃):重油使用量小。バイオマス燃料を使うことも
天然乾燥(自然乾燥):燃料ほぼゼロで環境負荷小
● 無垢材 vs 集成材・合板
集成材・合板は接着剤が付着している
→ 解体後は素材として再利用できず、チップ化して燃料化がほとんど
無垢材は“木そのもの”
→ 建て方と解体方法によってはリユース・再利用が可能
※ 森林管理の違い
LCAにおいて差を生みませんが、本質的には重要な環境要素です。
・大型機械や林道建設によって森を過度に荒らしていないか
・伐採後、必要に応じて植林がされ、持続可能な山林管理が行われているか

6. まとめ:LCAは「未来に責任を持つ家づくり」のための地図
「エコハウス」と聞くと、多くの方は “高断熱の家” を思い浮かべるのではないでしょうか。
たしかに、住宅のライフサイクルの中で 居住中の CO₂ 排出量が最も大きいことは事実です。
その意味で断熱性能を高めることは、とても重要な取り組みです。
しかし実際には、
家を建てるとき(製造時) や
家を壊すとき(廃棄時) にも
決して無視できない環境負荷が生じています。
さらに、問題は CO₂ に限りません。
-
資源の大量消費
-
廃棄物による大気・土壌・水質への影響
-
生態系の破壊
-
土地利用の変化による環境影響
など、住宅が引き起こす環境負荷はじつに多岐にわたります。
こうした幅広い視点で住宅の一生を捉えるのが LCA(ライフサイクルアセスメント) です。
LCA の目線を持って家づくりを進めることで、
より地球にやさしく、未来の環境に負担を残さない住まい を実現できます。
もし、こうした観点を大切にしながら家づくりを進めたい方がいらっしゃれば、
ぜひお気軽にご相談ください。
あなたの価値観に合った“本当のエコハウスづくり”をサポートいたします。
