「家を建てるなら、地球にやさしい家にしたい」
そんなふうに考える人は少なくないのではないでしょうか。
では、エコな家づくりとはどんな家づくりを指すのでしょうか?
私が大切にしたいのは、次の3つの視点です。
- 居住中の環境負荷を減らす家づくり
- 居住中以外(製造・修繕・解体・廃棄まで)の環境負荷を減らす家づくり
- 敷地の環境を再生する家づくり
どれか一つに取り組むのであってもいくらかは環境に貢献できると思います。
ですが本当に「地球にやさしい家」を目指すなら、この3つを全て考えることが理想だと思います。
この記事では、それぞれの概要をご紹介します。詳細は別の記事で掘り下げたいと思います。
1. 居住中の環境負荷を減らす
暮らしの中で使う電気やガスは、CO₂を排出し環境に負荷をかけています。
日々の暮らしで環境に対してかけている負荷は生活排水やゴミ、エアコンの排熱、CO2以外の温室効果ガスなどもありますが、その中でも影響が大きいのが「エネルギー消費」によるCO2の排出です。
平均的な4人家族の家がエネルギー消費により1年間に排出しているCO2の量は何と約3.7トン(約1900m3)。
(環境省 家庭部門の CO2排出実態統計調査2024より)
3.7トンとは凄い量ですよね。
ちなみに、大人1人は1年間でおよそ 0.3トンのCO₂(約 150m³)を呼吸で排出し、
樹齢40年程度の杉の木1本、樹齢30年程度のケヤキの木1本は1年間に約10kgのCO2を吸収します。
この家庭からのCO2排出量を減らしていくことは喫緊の課題だと思います。

これを減らすカギが、パッシブデザインとアクティブデザインです。
パッシブデザイン
建物の形や方位、素材の工夫で自然エネルギーを活かす設計手法。
断熱・日射遮蔽・日射取得・通風・採光などが代表例です。
アクティブデザイン
機械や設備でエネルギーを効率的に使う方法。
太陽光発電、エコキュート、太陽熱温水器、HEMS(電気の使用状況を「見える化」するシステム)、高効率家電やLED照明などがあります。
副次的なメリット
健康:室温が安定し、血圧の安定や基礎体温上昇に伴う免疫への良い影響、冷えやアレルギー症状の改善が期待できます。
経済:光熱費の削減や医療費の低減につながります。
2. 居住中以外の環境負荷を減らす
家は「建ててから使う」だけではありません。
資材をつくる・運ぶ・建てる・直す・壊す・処分する……すべての過程でエネルギーが使われ、CO₂が排出されます。
実は、木造住宅の建設から解体までのこの一連のプロセスにおけるCO₂排出は、15年分の居住中排出量に匹敵するとも言われています。
築50年で解体する場合、家によるCO2排出の約1/4がこのプロセスにより排出されることになります。
それより早く解体したり、高断熱化などの省エネにより、より一層このプロセスにおけるCO2排出量の割合が増えてきます。
そこで重要なのが次の工夫です。
- 改修・リユースしやすい設計にする
- リフォームで解体を極力減らす
- コンクリートや鉄などエネルギー多消費素材を減らし、無垢材をはじめとした自然素材やリユース材を活用する
- 地場のものなど、なるべく輸送距離の短い資材を使う
- 長寿命で使い続けられる家にする
副次的なメリット
健康:自然素材を使うことで、ホルムアルデヒドやVOC(揮発性有機化合物)による健康リスクが減ります。
経済:長寿命化は建て替えや修繕のコスト削減につながります。
3. 敷地の環境を再生する
家を建てることは、大地や自然に直接働きかける行為です。元々住宅があった場所に建てる場合であれ、地球から大地を借りて使わせてもらうことには変わりません。その土地をどう使うのか、コンクリートや防草シートで敷地を覆えば人間だけのための空間になり、草木や生き物と共生できる環境は失われます。
「どんな建物をどう建てるか」「どんな外構にするか」で敷地の環境は大きく変わります。
主な取り組み例:
自然の摂理に倣った土木造作
緑と命あふれる、生態系の豊かな庭づくり
副次的なメリット
健康・快適:緑に癒され、夏は涼しく、四季の変化を感じられる環境が生まれます。なにより自然と対話しながらの暮らしはとても楽しいです。
経済:地盤や湿気が安定することで建物の耐久性が向上します。
まとめ
「エコな家を建てること」を第一の目的にする人は多くないかもしれません。
ですが、実はエコな家は 住む人の健康・快適性・経済性に直結するメリット を持っています。
エコな家について広い視野で捉え、
自分たちの家づくりで できることから取り入れていただければと思います。